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島津製作所と京都大学の研究グループ、自己免疫性疾患治療用抗体医薬の一斉定量技術を開発


前処理キット「nSMOL(TM) Antibody BA Kit」


島津製作所と京都大学の研究グループは、自己免疫性疾患(※1)治療用の抗体医薬の一斉定量技術を世界で初めて開発した。測定には島津製作所の高速液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8050/8060」と前処理キット「nSMOLTM Antibody BA Kit」(※2)を使った。共同研究の成果は、6月12日に免疫学分野の学術誌「Journal of Immunological Methods」オンライン版で発表した(※3)。


2017年4月から2年間実施された研究で、複数の治療用抗体をヒト血清中より同時一斉定量する技術を開発した。具体的には、自己免疫性疾患の治療で使われている抗体医薬品を7品目(インフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブ、エクリズマブ、ゴリムマブ、エタネルセプト、アバタセプト)に対し、同一の分析条件で一斉定量するものである。定量技術の妥当性は、米食品医薬品局(FDA)のガイダンス基準(※4)に従って証明した。


2017年12月からの約1年間に京都大学医学部付属病院で収集された検体を用い、検体中に含まれる複数の抗体医薬の濃度について、一斉定量値が過去に取得した定量値と誤差5%という高い精度で一致することを確認した。本研究は、京都大学大学院医学研究科・医学部および医学部附属病院 医の倫理委員会倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:R0357、R0012、R1632)。


自己免疫性疾患の治療は抗体医薬の適正使用が重要であり、そのためには「血中の治療薬物モニタリング」(Therapeutic Drug Monitoring:以下、TDM)が有効とされている。近年、一部の疾患では投薬された薬の血中濃度と薬効の相関が報告されている。たとえば、関節リウマチでは米国リウマチ学会(ACR)や、欧州リウマチ学会(EULAR)が、血中濃度モニタリングによる薬効基準値の策定に取り組んでいる。

自己免疫性疾患は多様な病状を伴うので、複数の診療科で病状ごとに抗体医薬が使用されるが、各薬に対して個別にTDMを実施するのはコストや患者の負担などの課題があった。本研究成果は、自己免疫性疾患の抗体医薬の同時一斉TDMを可能とすることで、これらの課題をクリアするとともに、複数の疾患に対し一元的かつ横断的な検査、治療方針策定の可能性を開くものである。また本研究成果は、医薬品開発の現場において、バイオシミラー医薬品による治療効果の検証などにも適用が可能である。島津製作所は、医薬品の適正使用を通じて患者や医療従事者の負担を軽減するとともに、医療費増大の抑制に貢献していく。



※1 免疫細胞が自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し細胞を攻撃してしまうことで起こる疾患。関節リウマチをはじめとする膠原病などが代表的。

※2 超高速液体クロマトグラフ質量分析系用前処理キット。「LCMS-8050/8060」とともに使用することにより、簡便かつ迅速に高精度・低コストな抗体医薬の薬物動態解析が実現できる。nSMOL法は、抗体分子のN末端Fab領域を選択的に分解、回収し、質量分析にてモノクローナル抗体を定量する当社独自の技術(nano-surface and molecular-orientation limited proteolysis)

※3 Multiplexed monitoring of therapeutic antibodies for inflammatory diseases using Fab-selective proteolysis nSMOL coupled with LC-MS. Iwamoto N, Takanashi M, Yokoyama K, Yonezawa A, Denda M, Hashimoto M, Tanaka M, Ito H, Matsuura M, Yamamoto S, Honzawa Y, Matsubara K, and Shimada T*. J Immunol Methods. 2019. pii: S0022-1759(19)30141-3. doi: 10.1016/j.jim.2019.06.014.

※4 https://www.fda.gov/files/drugs/published/Bioanalytical-Method-Validation-Guidance-for-Industry.pdf



株式会社島津製作所

TEL: 075-823-1110

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