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東京医科歯科大学、がん関連線維芽細胞の形成を制御する仕組みを解明

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 硬組織病態生化学分野の渡部徹郎教授と吉松康裕講師 (現 新潟大学)の研究グループは、東京大学大学院医学系研究科 分子病理学分野の宮園浩平教授と赤津裕一氏(現 日本化薬株式会社)、北海道大学 大学院歯学研究院 口腔病態学分野の樋田京子教授、東京医科歯科大学 難治疾患研究所 分子細胞遺伝分野の稲澤譲治教授と村松智輝助教の共同研究で、TGFβにより腫瘍血管内皮細胞から形成されるがん関連線維芽細胞(CAF)が腫瘍形成を促進する作用を、FGF2 が抑制することをつきとめた。この研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)次世代がん 医療創生研究事業(P-CREATE)「口腔がんの悪性化機構の解明とそのメカニズムに基づく新規治療標的探索 研究」(研究開発代表者:渡部徹郎)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業「生体における動的恒常性維持・変容機構の解明と制御」(研究代表者:渡部徹郎)、文部科学省 科学研究費補助金、上原記念生命科学財団等の支援のもとで行われたもので、その研究成果は、国際科 学誌 Molecular Oncology に、2019 年 6 月 19 日(米国東部時間)にオンライン版で発表された。



【研究成果の概要】

研究者グループは腫瘍血管内皮細胞(TEC)を用いて TGF-βにより CAF へと分化転換する過程における FGF2 の役割について解析を行った。その結果、TEC は TGF-β存在下で培養すると内皮細胞の性質を失い、その一部は筋線維芽細胞へと分化転換するが、FGF2を添加するとTGF-βによる筋線維芽細胞の形成は抑制された(図1)。


図1 腫瘍血管内皮細胞におけるTie2(赤色)の発現(左)はTGF-βにより消失し、一部の細胞は筋線維芽細胞(α-SMA:緑色)へと分化転換する(中)。FGF2を添加することでα-SMA陽性の細胞の形成は完全に抑制された(右)。

図2 悪性黒色腫細胞をTEC由来の筋線維芽細胞または非筋線維芽細胞と共移植した結果、筋線維芽細胞の方が腫瘍形成能が高いことが示された。

FGF2 の作用により、TECからTGF-βにより形成されるCAFは悪玉 CAFの特徴である収縮性の性質を持つ細胞から、善玉 CAFの特徴である運動性と増殖性が高いものに変化することが明らかになった。さらに、こうした培養細胞を用いた結果を個体レ ベルで検証するために、TGF-β存在下で培養したTECまたはTGF-βとFGF2存在下で培養したTECを悪性黒色腫(メラノーマ) 細胞と混合して免疫不全マウスの皮下に移植して腫瘍形成に与える効果を検討した。その結果、TGF-βによりTECから形成された悪玉CAFの腫瘍形成作用は、FGF2 の添加により抑制されることが示された(図2)。



こうした FGF2 の作用のメカニズムをさらに検討するために、研究者グループは TGF-βと FGF2 存在下で培 養した TEC の遺伝子発現を解析し、悪玉 CAF に特徴的な様々なマーカーの TGF-βによる発現上昇が FGF2 により低下し、善玉 CAF に発現している様々な成長因子の発現が FGF2 により上昇することが示されました。 TGF-βは MRTF-A 転写因子*6の発現を上昇させることで悪玉 CAF のマーカー(α-SMA)の発現を誘導します が、FGF2 により活性化される Elk1 転写因子*7は MRTF-A の作用を阻害することによってα-SMA の発現を低 下させ、TGF-βによる TEC からの悪玉 CAF の形成を抑制することが明らかとなりました(図3)。


図3 本研究のまとめ TGF-βにより発現が上昇するMRTF-A転写因子はSRFと結合してα-SMA発現を誘導することで筋線維芽細胞の形成を促進する。FGF2により活性化されたElk1転写因子はMRTF-Aと競合することでα-SMA発現を抑制し、活性化線維芽細胞の形成を誘導する。

【お問い合わせ】

<研究に関すること>

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科

硬組織病態生化学分野

渡部 徹郎 (ワタベ テツロウ)

TEL:03-5803-5449 FAX:03-5803-0187

E-mail:t-watabe.bch@tmd.ac.jp